落雷対策には“ハード”と“ソフト”がある！？
製造業の現場で選ぶべき対策とは

落雷は製造業の現場で予期せぬトラブルを引き起こす原因となります。具体的な事例を交えて紹介します。

1-1. 雷による設備故障、ライン停止、データ損失の事例

ある食品メーカーの工場では、雷による瞬時電圧低下（瞬低）で一部機器が故障し、生産ラインが停止。復旧作業により2時間の生産遅延が発生しました。
また、雷によるデータ損失も深刻な問題です。あるIT企業のデータセンターでは、4回の落雷が電力系統に影響を与え、瞬時停電で顧客データが消失する被害が発生しました。製造業でも、品質管理や在庫管理システムが破損すると、再生産やロスが生じ、経済的損失が拡大するリスクがあります。

1-2. 雷サージ、瞬低、電源喪失などの見えづらいリスクの正体

雷による影響は、目に見えない形で現れることが多く、非常に厄介です。
雷サージは、雷によって発生した過電流や過電圧が電力線や通信線を通じて機器に侵入し、機器の誤作動や故障を引き起こします。
瞬低は、雷や故障によって一時的に電圧が低下する現象です。通常は0.07〜2秒で終了しますが、この間に機器が誤作動を起こし、生産ラインが停止することがあります。
電源喪失も大きなリスクです。雷が原因で停電が発生し、生産中断や復旧作業、追加のコストが発生する可能性があります。電源復旧後も、ラインの再稼働には時間を要し、大きな遅延が生じることがあります。

1-3. 気候変動とBCP（事業継続計画）強化が落雷対策の重要性を後押し

近年、気候変動により落雷の頻度と強度が増加しています。特に温暖化が進む中、大気の不安定化に伴い雷を伴う気象現象が増え、製造業における雷リスクが高まると予測されています。

BCPの重要性が高まる中、雷による生産中断や機器損傷を防ぐための対策が必要です。特に、雷による事故が引き起こす生産停止や設備損傷は、業務に深刻な影響を与えるだけでなく、顧客への納期遅延や品質低下、追加コストの発生といった二次的なリスクも生じるため、事前のリスク管理と迅速な対応が求められています。

雷による影響を最小限に抑えるためには、物理的な対策が重要です。ここでは、避雷針やアース工事、SPD（避雷器）、UPS（無停電電源装置）など、設備や施設を雷から守るために必要なハードウェア対策を解説します。

2-1. 避雷針・アース工事の基本と役割

雷による影響を防ぐための最も基本的なハードウェア対策が、避雷針とアース工事です。
避雷針は雷が建物に直撃するのを防ぎ、エネルギーを地面へ導きます。これにより、設備へのダメージや火災リスクを軽減します。
避雷針が正しく機能するためには、地面との接続が非常に重要です。これがアース工事です。アース工事では、雷が流れる電流を地面に逃がします。接地が不十分だと、雷エネルギーが機器に伝わり損傷の原因となるため、設計と施工を確実に行うことが必要です。

2-2. SPDによるサージ吸収の仕組みと設置ポイント

SPDは、雷による電圧サージを吸収し、設備を保護するための重要なデバイスです。雷サージを吸収して設備を保護し、過電圧が機器にダメージを与えるのを防ぎます。SPDは、電力ラインや通信線に設置され、サージを受けた際に電圧を急激に低下させ、機器を守ります。
設置ポイントは、分電盤や配電盤、通信機器の入り口などで、定期的なメンテナンスも重要です。

2-3. UPSで瞬時電圧低下から制御系を守る

UPSは、瞬低や停電時に電力を供給し、制御系や重要機器を守ります。瞬低や停電時、設備が誤作動を起こすことがありますが、UPSは瞬時に電力を供給し、ライン停止を防ぎます。
UPSにはバッテリーシステムが内蔵され、一定時間内であればバックアップ電力を提供。選定時は重要機器の電力消費量に応じた容量を選ぶことが必要です。

雷によるリスクに備えるためには、物理的なハード対策だけでは不十分です。リアルタイムでの監視と情報提供が重要な役割を果たします。ここでは、雷鳴神’s Eye（ライメイシンズアイ）のようなソフトウェアを活用することで、見えづらい雷の影響を予測し、迅速な対応を可能にする仕組みについて説明します。

3-1. リアルタイムの雷情報可視化とそのメリット

雷鳴神’s Eyeでは、高精度な発雷予報を活用し、どこで雷が発生するのかを事前に把握できます。これにより、安全対策を計画的に立て、突然の雷によるリスクを回避する準備が整います。リアルタイムで雷の接近状況を把握できるため、工場内の警戒態勢を強化し、必要に応じて生産ラインの停止や機器の保護が迅速に行えます。この可視化機能は、雷から工場や従業員を守るために非常に効果的です。

3-2. アラート通知によるライン停止判断と人的被害回避

雷が接近すると、雷鳴神’s Eyeは即座に接近アラートを発信します。これにより、生産ラインの停止や避難指示を迅速に行い、人的被害や機器損傷を最小限に抑えることができます。現場スタッフが適切なタイミングでライン停止や安全避難を判断できるようになり、混乱を避けることが可能です。雷の終息時には、解除通知が届き、操業再開や復旧作業を確実に行うことができます。

3-3. 過去ログの蓄積と、安全対策・社内稟議資料としての活用

雷鳴神’s Eyeは過去の雷データを蓄積しており、履歴検索が可能です。これにより、雷が発生した場所や時期を確認でき、点検や設備確認を効率よく行えます。さらに、過去の雷データをBCPに組み込んだり、社内稟議資料として利用したりすることで、リスク管理能力を高め、将来の雷対策を強化するための参考になります。

4-1. 指定したエリアを一元管理、通知と対応フローを標準化

ある企業では、以前は雷情報を収集・通知する他システムを導入していました。しかし、対応する必要のない落雷の検知が多く、現場の混乱や不必要な作業が発生していました。
雷鳴神’s Eyeは、あらかじめ指定した条件・エリアのみ通知するので、無駄な対応を省くことができます。複数の工場エリアを一元的に管理し、各エリアで発生した雷の情報を迅速に把握できるシステムを提供します。たとえば、複数の拠点を持つ企業では、管理者が特定のエリアの通知や対応フローを標準化し、すべての情報を集中して管理できます。これにより、拠点ごとに異なる対応が行われることなく、全社的に統一された対応が可能となり、雷のリスクに対する迅速なアクションが実現します。

4-2. 現場の判断基準が明確化、属人化のリスクが減少

ある企業では、以前は雷によるライン停止や再開の判断が現場担当者に委ねられ、雷雲の確認や雷鳴に基づく判断が求められていました。このため、従業員に大きな責任がかかり、誤判断のリスクや心理的負担が増加していました。
雷鳴神’s Eye導入後、判断基準が明確に定義され、自動判断に切り替わったことで、現場のストレスが軽減され、属人化を防止。さらに、パトライトとの連携により、工場内で状況を一目で把握できるようになり、スタッフの負担も軽減されました。

4-3. BCPやESG資料としての活用も

雷鳴神’s Eyeは、BCPやESG（環境・社会・ガバナンス）レポートにも活用できます。事前の雷予測やリアルタイムの落雷監視データを基に、工場や施設が雷の影響を最小限に抑える対策を講じ、その実績をBCPやESGレポートに組み込むことができます。
また、雷による生産ライン停止を未然に防ぐ取り組みを示すことで、企業のリスク管理体制を強化し、ステークホルダーの信頼を高めることが可能です。これにより、リスク削減や社会的責任を果たすことができます。

自社の雷対策が十分か再確認するために、以下のチェックリストを活用しましょう。

5-1. SPD（避雷器）は設置済みか？

雷サージから設備を保護するため、SPDが適切に設置されているか確認しましょう。特に精密機器や制御系機器が多い場合は重要です。

5-2. UPS（無停電電源装置）は設置されているか？

UPSは瞬低や停電時に機器を保護し、ライン停止を防ぎます。重要機器に適切な容量・設置位置で設置されているか確認しましょう。

5-3. 雷情報をリアルタイムで把握できる手段はあるか？

雷情報の可視化は対策の基盤です。システムがデータ精度や通知機能に優れ、迅速な対応を支えるか確認しましょう。無料システムでは機能が不十分なことがあるため、より精度の高いシステムを選ぶことが重要です。

5-4. 作業停止・避難判断基準は明文化されているか？

雷接近時の作業停止・避難判断基準が明文化されているか確認しましょう。明確な基準により、従業員が迅速かつ安全に行動でき、現場の混乱を防げます。

5-5. 雷被害の記録は残せているか？

雷被害時に日時や影響、対応内容を記録し、次回に活かせるようにしましょう。また、BCPに組み込むことで、リスク管理が強化されます。