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雷対策特集

製造業における落雷の影響とは?
雷が与える工場設備・生産体制のリスクと損害

目次

01製造業における落雷の影響とリスク管理のポイント

1-1. 工場に深刻なダメージを与える「雷サージ」の種類

近年、全国で落雷数が増加しており、製造業が雷の影響を受けるリスクも高まっています。こうした雷が直接・間接的に電力系統や通信線に影響を及ぼすのが「雷サージ」です。
雷サージには、直撃雷・誘導雷・逆流雷の3種類があり、それぞれの特徴を理解することが雷害対策において欠かせません。

直撃雷

雷雲と地面または高い構造物(鉄塔やビルなど)との間で放電が発生する現象です。これがいわゆる「落雷」であり、工場内部を直撃すると、設備の破損や火災が発生する可能性があります。

誘導雷

雷による電磁誘導が近くの金属線(電力線や通信線)に伝わり、異常電圧が発生する現象です。工場で発生する雷害の多くはこの誘導雷によるもので、直撃雷よりも発生頻度が高く、現場にとって大きなリスクとなっています。

逆流雷

直撃雷によって大地の電位が上昇し、電力線や通信線を通じて工場内に侵入する現象です。停電や機器の故障を引き起こします。

工場設備を脅かす3つの雷現象イメージ

1-2. 製造業で雷の被害が深刻になりやすい理由

製造業は、その生産体制や設備の特性から、雷の影響を特に強く受けやすい業種です。多くの設備や機器が電力に依存しているため、雷が発生すると、機器の誤作動や生産ラインの停止につながりやすく、生産効率の低下や最悪の場合は製品製造が不可能になるリスクがあります。

また、雷による過電圧が設備や機器にショートを引き起こし、火災の原因となることもあります。特に直撃雷や誘導雷による場合、工場内での火災リスクが高まります。

製造業で雷の被害が深刻になりやすい理由イメージ

02落雷が工場設備に与える具体的な影響と被害

2-1. 制御盤・PLC・通信機器の故障や誤作動

制御盤やPLC(プログラマブルロジックコントローラー)、通信機器は製造ラインの正常運転に欠かせません。これらは精密な半導体基板を使用しており、雷サージや電圧変動に非常に脆弱です。過電圧で内部回路が破壊されると、機器が突然停止したり、正常に動作しなくなったりし、製造工程全体の中断につながります。特に半導体製造装置やロボット制御システムでは、わずかな電圧変動でも品質低下や工程停止といった深刻なリスクが発生します。

制御盤・PLC・通信機器の故障や誤作動イメージ

2-2. 瞬時電圧低下(瞬低)によるライン停止

瞬低は、送電線への落雷や電力系統の異常で電圧が一時的に低下する現象です。電力会社の保護装置が作動することで瞬低が発生し、生産ラインが緊急停止することがあります。これにより加工途中の製品が廃棄されるなど、大きな損害につながります。特に半導体、フィルム、液晶製造装置といった精密機器は影響を受けやすく、停止や誤作動によって生産中断や品質問題を引き起こすリスクが高いとされています。

2-3. 設備損傷・生産中断による品質リスクと納期遅延

雷による設備損傷は、生産活動に直結する深刻なリスクです。精密機器が故障するとライン全体が停止し、仕掛品の廃棄や不良品の発生が増えるだけでなく、修理費や部品調達の遅れで復旧が長期化する恐れがあります。また、停電による温度管理の乱れが製品品質に直結するケースもあります。その結果、品質問題や納期遅延が生じ、顧客の信頼失墜につながります。特に自動車部品や電子部品のように納期厳守が求められる業界では、わずかな遅延でも大きな損失となりかねません。

設備損傷・生産中断による品質リスクと納期遅延イメージ

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03落雷リスクが現実化した生産現場のトラブル事例

事例① 自家発電切り替えが間に合わず、生産ラインが停止

ある食品メーカーの工場で、工場から100km以上離れた送電線の鉄塔付近での落雷により、工場内の電圧が瞬間的に低下しました。自家発電設備への切り替えが間に合わず、一部機器が故障し、2時間の生産遅延が発生。製品の品質確認や機器復旧作業により生産が中断されました。
この事例では、遠隔地での落雷でも工場に影響が及ぶことが示されており、落雷対策は工場周辺だけでなく、送電網全体を考慮する必要があることがわかります。

事例② 設備停止と再稼働遅延による生産ロス

ある半導体製造工場では、送電線への落雷による瞬低事故で生産設備の約9割が停止。再稼働に6日間、生産ライン回復にさらに時間がかかり、最終的に2週間分の生産ロスが発生しました。瞬低対策の電源装置を導入していたものの、実際の電圧低下時間が予想を超えたため、多くの設備が停止しました。
半導体製造のような高精度が要求される工程では、わずかな電力変動でも大きな影響を受けやすく、復旧にも慎重な調整が必要となります。

事例③ 雷サージによる制御機器損傷と安全リスク

ある工場では、雷サージが電力線を通じて侵入し制御コンピュータが損傷。産業用ロボットが誤作動で一時的に暴走し、操業停止と作業員への安全リスクが発生しました。
近年の工場は自動化設備や長大な配線を多く抱えるため雷サージに弱い環境にあります。この事例は直撃雷がなくても雷サージによって重大な被害が生じることを示しています。

落雷が引き起こす生産現場のトラブル事例イメージ

04落雷リスクが高まる背景と企業に求められる対策

4-1. 気候変動による落雷発生件数の増加傾向

気候変動により落雷発生件数が増加しています。気象庁の観測データによると、日本国内の落雷日数は8年間で約3倍に増加

2015年 713件
2020年 1,803件
2023年 2,170件

温暖化による大気の不安定化が落雷の頻度や強度に影響しています。特に夏季(6月〜9月)に落雷件数が多く、8月は平均約93万件、6月や9月も50万件を超えることがあります。
この傾向は今後も続くと予想されており、製造業においては従来以上に雷対策の重要性が高まっています。

日本国内における落雷日数の推移グラフ

4-2. 企業に求められる落雷リスク対策

製造業はBCP(事業継続計画)と安全管理体制の強化が必要です。2025年4月に改正された労働安全衛生法では、自社従業員だけでなく下請け企業の従業員保護も明記されました。企業は全従業員の安全確保のため、落雷リスクを含む安全対策の総合的見直しが求められています。
気象庁の雷予測データは基礎情報として重要ですが、工場や施設ごとの詳細なリスク管理には、より精度の高い雷予測技術の活用が必要です。

まとめ〜製造業が落雷リスクを回避するための重要なポイント

製造業では、現場の雷対策が不十分だと、設備の損傷や生産ラインの停止だけでなく、人的被害や大規模な経済的損失につながる恐れがあります。雷は完全に防げない自然現象だからこそ、「被害をゼロにする」のではなく「被害を最小限に抑える」備えが求められます。
そのためには、再稼働手順やバックアップ体制の整備、従業員の安全教育、そして精度の高い雷予測技術の活用が不可欠です。加えて、雷サージ対策機器やUPS(無停電電源装置)の導入といった設備保護も組み合わせることで、被害を大幅に軽減できます。
企業は全従業員の安全を最優先に据え、落雷を前提としたリスクマネジメントを実行することが必要です。被害を最小化する体制を整えることこそが、これからの製造業における持続的な成長と信頼確保につながります。